思いやりのある理想的な介護サービスを実現するには、利用者といかに信頼関係を築けるのかが、大きなカギになります。
そのためには共感的理解をマスターし、それを具体化するためのコミュニケーション技術を磨く必要があります。
介護の仕事では利用者の日常生活で必要になる、あらゆるサービスを提供します。
介護を受ける側からすれば、第三者に見られたくない、知られたくないといったような、極めてプライベートな領域への介入が余儀なくされます。
そのため信頼できる人から介護を受けたいという願いが起こるのも、当然と言えます。

介護職はこのような利用者の気持ちに寄り添った上で、利用者の日常生活をはじめ人生経験や社会的に置かれた状況などを、できるだけ包括的に把握することが求められます。
共感的な理解ができれば、お互いに現実に生きる人間として支え合う気持ちが生まれ、信頼関係の構築も進みます。
そして結果的には、思いやりのある介護サービスへとつながるのです。

この共感的理解を具体化するために不可欠なのが、コミュニケーション技術です。
誰でも人間らしく生きるには、他者との関係性を形成しなければなりません。
対人援助を目的とする介護の仕事では、コミュニケーションがまさに介護技術の基礎になります。
具体的なコミュニケーション技術には、繰り返しの技法や要約の技法をはじめ、保障の技法や共感の技法、あるいは促しの技法や沈黙の技法など、幅広く多様な技術があります。
これらを一挙に体得するのはなかなか難しいのが現実でしょう。
介護の現場で一つ一つの技術を試しながら、焦らず徐々に習得していくことが肝心です。